武蔵野読書生活

神保町と古書店、そしてうまいカレーが好きな本好きのブログ

日本空襲、模擬原爆は全国各地に投下されていた(追補版)

※こちらのミスで8/2版記事に付加されていたものを戻しました。

 米軍が原爆投下に備えて模擬原爆を用いていた事実をご存じだろうか。この模擬原爆は長崎型原爆「ファットマン」と同一形状で橙黄色に塗装されていたことから「パンプキン」と呼ばれ、1945年7月20日から終戦の詔勅が発せられる前日8月14日までの間に49発も福島・新潟以南の日本各地に投下されている。模擬と言っても炸薬2300kgの通常爆弾であり、投下に際して多くの犠牲者が出ている。地方では富山市やいわき(平)、宇部四日市、東京周辺では保谷や八重洲練馬や武蔵野市などの住宅地や工場が目標となっている。結果的にこの時期にB29少数機編隊による日本本土侵入と爆弾投下という攻撃パターンが多発することで、広島・長崎原爆投下時の防空、避難態勢が不十分になった可能性もあるのだろう。

 『写真が語る日本空襲』は、パンプキンを始めとして、米軍の日本空襲を米軍の側から記録した写真集だ。米軍側からの記録なので、通りにうずたかく積まれた焼死体も焼き尽くされた街路の光景などは1枚も掲載されていない。その代わり、如何に効率的に生産力を持つ都市や工場を焼き払うか、海洋国家日本の通商路を断つにはどうしたらいいかを考え抜かれた様々な装置、兵器が随所で紹介されている。加えて国民を動揺させるための心理作戦に用いられた各種ビラにも誌面を割いている。ページをめくると、冷静な筆致と写真から「国家総力戦を効率的に近代兵器で戦う」ということがどういうことかがじわじわと伝わってくる。

 大戦末期、筆者の実家も空襲を受けた。空母艦載機による機銃掃射と小型爆弾の投下だが、幸い実家には命中弾はなかったが、つい数年前まで灯火管制で白い土壁を黒く塗った跡が残されていた。戦争経験者の我が家の父母は健在だが、戦後60年以上を経て戦争について語る人も少なくなってきた。本書は米軍側から見た第二次世界大戦日本空襲の実相を知る有効な手がかりとなるだろう。

※追記

◎パンプキン投下都市一覧

パンプキンによる攻撃が実施された国内の都市名は次の通り。

都道府県 投下数 投下都市名(カッコ内数字は当該都市への投下数)

  • 1 北海道 0
  • 2 青森 0
  • 3 岩手 0
  • 4 秋田 0
  • 5 宮城 0
  • 6 山形 0
  • 7 福島 6 福島(1) 郡山(2) いわき(平)(3)
  • 8 新潟 3 長岡(1) 柏崎(1) 鹿瀬(1)
  • 9 茨城 2 北茨城(大津)(1) 日立(1)
  • 10 栃木 0
  • 11 群馬 0
  • 12 埼玉 0
  • 13 千葉 0
  • 14 東京 2 保谷(1) 八重洲(1)※皇居を狙って投下したが外れたと伝えられる:出典Wikipedia
  • 15 神奈川 0
  • 16 山梨 0
  • 17 静岡 3 焼津(1) 島田(1) 浜松(1)
  • 18 長野 0
  • 19 富山 4 富山(4)
  • 20 石川 0
  • 21 愛知 8 名古屋(1) 春日井(4) 豊田(3)
  • 22 岐阜 1 大垣(1)
  • 23 福井 1 敦賀(1)
  • 24 三重 3 四日市(3)
  • 25 滋賀 1 大津(1)
  • 26 京都 1 舞鶴(1)
  • 27 大阪 1 大阪(1)
  • 28 奈良 0
  • 29 和歌山 1 有田(1)
  • 30 兵庫 4 神戸(4)
  • 31 鳥取 0
  • 32 島根 0
  • 33 岡山 0
  • 34 広島 0
  • 35 山口 3 宇部(3)
  • 36 徳島 1 徳島(1)
  • 37 香川 0
  • 38 愛媛 4 新居浜(3) 西条(1) 宇和島(1)
  • 39 高知 0
  • 40 福岡 0
  • 41 熊本 0
  • 42 大分 0
  • 43 佐賀 0
  • 44 長崎 0
  • 45 宮崎 0
  • 46 鹿児島 0
  • 47 沖縄 0

合計 49

◎原爆投下目標決定の流れ
※『日本大空襲』第7章 広島・長崎への原爆投下命令、および『カラー写真で見る「原爆」秘録』より

 1945年5月2日、米国ワシントンDCで開催されたマンハッタン計画『暫定委員会』は、原爆投下都市として以下の4つを候補に挙げた。

  • 1 小倉(小倉陸軍造兵廠)
  • 2 広島(海軍造兵廠、宇品港)
  • 3 新潟(各種工場、港湾機能)
  • 4 京都(工業都市、旧首都、原爆の破壊力を試すのに都市規模が適切)

 席上、スチムソン陸軍長官は、フィリピン総督時代に京都を訪問した経験から「京都は日本古代の首都で、日本人にとって偉大な宗教的重要性を持った都市である」として投下に反対した。一方、原爆開発総指揮官グローブス少将は京都を投下第一候補として考え、会議は紛糾しそのまま散会した。グローブスは、京都は空襲の被害が少なく人口も100万人を超え、大学が多いので原爆を投下した場合、その意味を理解するだろうと考えていた。

 同年7月24日、ワシントンDCで開催された投下目標の選定委員会は、スチムソンの工作により、京都をリストから外し代わりに長崎を加えることを決定した。同25日、正式に原爆投下命令が下された。なお、翌26日のポツダム宣言発表前に指令は発せられていたことになる。

夏休み、妄想の海外旅行ならこれ!

 最近、県境のナゾとか変な国ネタなど地理・歴史の本が増えたと思いません?
 私は小国とか、滅亡した歴史上の国、全く架空の国とかが好きだ。小学生の頃、NHKで「プリンプリン物語」という児童向け人形劇が放送されたときなど、主人公一行が毎回新しい国を訪れる度に奇天烈な設定に喜んだ物だ。オサラムームー、アクタ共和国、バルンバ帝国… アクタ共和国の国歌など今でも歌えるw そんな国好きの私なので、ここ数年の国ブームはまさに大歓迎。知人の出版プロデューサーもこのジャンルでコンビニ向けの軽装本を2冊ほど手がけていたので、出版社にとって出しやすいジャンルなのかも知れない。で、そんな私が読んだ中でこれは濃くておすすめ!というものは次の2冊。

 まずは『国マニア』からご紹介。上のamazonリンクは筑摩書房版の文庫本だけど、ウチにあるのは交通新聞社版で、加筆訂正等で若干記述が違っているかも知れませんがご容赦を。こちらは珍国、小国を取り上げ、その国のどこが面白いのか、あるいは興味深いのかを深く掘り下げてくれている。例えば沿ドニエストル共和国旧ソ連の地域が独立宣言をしたところだが、未だにレーニン像が建っていて、今もソ連が生きている国だとか。こんな感じでWikipediaにもあまり書いてないような面白ネタが満載なのだ。寝苦しい夏の夜に睡眠薬代わりに読むのもありかも。

掲載国・地域

バチカン市国モナコ公国ナウル共和国、ツバル、サンマリノ共和国リヒテンシュタイン公国マーシャル諸島共和国、セントクリストファー・ネービス、モルディブ共和国マルタ共和国、アトス山、コソボ自治州アラブ首長国連邦ザンジバルグリーンランドプエルトリコバミューダ、クック諸島、ブーゲンビル自治州、トゥバ自治共和国、クリミア自治共和国、ユダヤ自治州、香港特別行政区チベット自治区沿ドニエストル共和国アブハジア共和国、南オセチア共和国、ナゴルノ・カラバフ共和国、北キプロス・トルコ共和国サハラ・アラブ民主共和国ソマリランド共和国、ピトケアン島、スバールバル諸島、クチビハール、ジブラルタルアンドラ公国、ブガンダ、マルタ騎士団、ビアフラ共和国、東パキスタン、ローデシア、シッキム王国、サラワク王国、北ボルネオ会社領、大東諸島、ニューヘブリデス諸島、中立地帯、ダンチヒ自由市、パナマ運河地帯、満鉄付属地、ホームランド


 で、もう一冊の『世界飛び地大全』は、更に国好き地理好きには堪らない「飛び地」を取り上げた本だ。「飛び地」って何?ってヒトも多いと思うが、例えばパレスチナ自治区。ヨルダン川西岸地区とガザ地区という二つのエリアに分断されているワケで、この場合主都があるヨルダン川西岸地区が本土でガザが飛び地になる。ただし本書によると実際はかなりフクザツで政府機関の庁舎はヨルダン川西岸地区とガザの両方にあり、加えて日本領事館はガザにあるのだとか。いや、よく調べてます。『国マニア』が前菜ならこっちはメインディッシュ。有名どころでは香港の九龍城からインド独立の際に吸収されてしまった欧州諸国の植民地や保護領とか、ほんと細かいところまで拾ってます。まさに教科書では教えてくれない歴史秘話だらけで、こちらは睡眠薬代わりのつもり読むとかえって目が覚めてしまうかも…

 ちなみにこちらは取り上げた地域が多すぎるので入力しておりませんw

万博?万博と言えば大阪万博のことだろう

 上海万博が開催中だ。今年の10月までということで、知人も先日見に行った。ぜひ見に来たいと思っているが、予算とか都合とかで行けそうもない。ちなみに私の中でバンパクと言えば、未だに日本万国博覧会こと大阪万博のことだ。

 実は大阪万博には行っていない、というか家の事情で連れて行って貰えなかったのだ。当時、日本の総人口1億466万人で大阪万博に行った人が延べ6400万人。計算上は行かなかった方が少数派。未だに親を恨んでいて、先月も文句を言った(粘着気質なのだ)。

 とまれ、大阪万博は日本人の心に大きなものを残し、未だに影響を与え続けている。そして行っていないのにバンパクが未だに気になるヒトも居る訳だ。そんな訳で大阪万博の写真集をなぜか先日入手、いやあホント懐かしい写真でいっぱいです(年がバレるなあ)。

 コンパニオンの制服は「サイケ」「ツィギー」などすでに歴史の彼方に消え去ったファッションだし、パビリオンのデザインはレトロフューチャーそのもの…
居住性、快適性から絶対住めないような未来住宅、遂に我々の生活に現れなかった未来キッチン、長風呂のリラックスに縁遠そうな未来バスユニット… でも、写真集の中で見学者はみな目を輝かせて展示物を見ている。この時代、未来には夢があると思われていた時代なのだ。

 そして忘れられないのが「太陽の塔だ。40年経っても未だに古さを感じさせない奇才・故・岡本太郎の名デザイン。今世紀に入ってからでも、「映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」「20世紀少年」で劇中でシンボリックに登場している。さらに海洋堂から今度、太陽の塔のフィギュアが出るとか。

 職場のデスクに置いたら、アヤシイ美少女フィギュアとは違った意味で注目を集めそうだ。まさに大阪万博が日本人の心に大なり小なり足跡を残していることを感じさせるアイテムだ。

 オリンピックと万博を開催すれば、その国は先進国の仲間入り、とも言われる。日本もかつて経験し、今まさに昇り龍の中国が万博とオリンピックの二つのクエストを終えようとしている。上海万博が開催されている今だからこそ、大阪万博を思い出してみるのも悪くはないだろう。

金星を立体パズルで作る

仕事で都心に出るついでに、ビッグサイトで開催されている東京おもちゃショー2010へ。
先日の日記に引き続き本ネタではないが、趣味の宇宙系アイテムはちょいと期待できるので足を伸ばしてみた訳だ。ということで脱線お許し頂きたい。
さすがに休日だけあって親子連れで大混雑、出展側も各種イベント開催で大いに盛り上げていた。

で、今回出品されていた商品で「おッ!」と思ったのは次の3点だ。

やのまん
球体パズルに金星儀登場


はやぶさ」の帰還以来、なにげに宇宙ブームが続いていて嬉しいところだが、ジグソーパズルのやのまんから金星儀が登場する。これまたマニアックな商品で、実際Amazonで「金星儀」で検索してもこれしか出てこない。月球儀、火星儀くらいならまだともかく…というくらいのレアアイテム。ただ、JAXAの惑星探査機「あかつき」が12月に金星に到着する予定なので、まさにタイムリー。ウチにも月球儀があるが、ぜひ火星儀共々並べたいアイテムだ。


7/18昼には在庫があったのに夜には在庫切れ、人気だなあ… てか発注しておけばよかったorz

●バンダイ
「大人の超合金 スペースシャトルエンデバー」
前作はアポロ11号月着陸40周年を記念して「大人の超合金 アポロ11号&サターンV型ロケット」を発売して企画と値段で度肝を抜かれたものだが、今度はスペースシャトルエンデバーを発売する。本来なら記念すべき第一号シャトル「コロンビア」を選びたかったのかも知れないが、コロンビアは墜落事故で失われているため、健在なエンデバーを選んだのだろう。



精密なパーツを組み合わせることで、打ち上げから軌道上、地球帰還までの各フェイズを再現できるようになっている。

初回特典は宇宙飛行士を発射台まで運ぶアストロバンと宇宙飛行士7名のフィギュア。なんとなく1986年のチャレンジャー打ち上げ事故で亡くなったエリソン・オニヅカ飛行士やシャロン・マコリーフに見えてしまうのは私がジジイだからだろう。


リンク先の写真2枚目にあるようにLEDライトで夜間の発射台の雰囲気まで再現している。渋い…


「大人の超合金 アポロ11号&サターンV型ロケット」は大人気で品薄、値段もまたまた高騰している。もしかすると「はやぶさ」効果なのか?

超合金魂 GX-57 宇宙戦艦ヤマト
前回の超合金魂宇宙戦艦ヤマトを設計し直して秋に再登場するのが「超合金魂 GX-57 宇宙戦艦ヤマト」。確かにデキはいい。大物のヤマト立体製品と言えば1/350プラモデル「宇宙戦艦ヤマト」が数年前に発売されて話題になったが、あれは側面のパルスレーザーの配置がまったく許せず買っていない。なんであんなに原作無視の歯抜けスカスカ配置にしたのか設計者を正座させて聞いて見たいくらいだ。その点、こちらではパルスレーザーに関して密集配置になっていて見ていて気持ちが良い(同じ設計者だったりしてw)。

初回特典は七色星団の決戦でドメル将軍が使ったドリルミサイル(笑)。前回の超合金魂ヤマトの特典はコスモクリーナーDだったけど、毎回いろいろ考えてますね、バンダイさん。値段も前回並ってのが嬉しいところ。

ちなみに「さらば宇宙戦艦ヤマト」「宇宙戦艦ヤマトw」で登場した地球防衛軍旗艦新造戦艦アンドロメダも企画検討中らしく、ヤマトの脇にモックアップが陳列されていた。写真撮影禁止だったので残念ながら載せられないが、早く発売が決まって欲しいものだ。

ということで東京おもちゃショー2010は明日まで。

落雷からデータやパソコンを守れ

いよいよ関東も梅雨明け、夏本番だ。
夏本番というと気になるのが雷。読書と関係ない、と言う人も居るかも知れないが、ウチはスキャンした雑誌データがパソコンに保存してあるので、万が一落雷でHDDがトンだら目も当てられない。

ちなみに落雷事故でウチは電話機を壊されたことがある。近所の高層マンションに落雷があった直後、ウチの固定電話機の動作がおかしくなった。原因は電話線を伝ってきた雷サージ電流。自宅マンションは低層なので落雷はないだろうと思っていたが、まさか近所の落雷でウチの機械が壊れるとはそれまで予想だにしなかった。結局新しい電話機を買うハメになり1万円ほど出費することになりました(泣

以来、落雷対策として電話線や電灯線を雷サージ電流から守るサージプロテクターは必ず設置することにしている。たかだか数百円の投資で代えの聞かない重要なデータや機器を守れるのだから安いものだ。リンク先のサージプロテクターは低価格のものは数百円から。ちょっと前まで値段2000円くらいしたけどずいぶん下がったという感じだ。子供の頃は雷接近!となれば家中のコンセントを抜いた記憶があるけど、常に大事な機器のそばに居られる訳ではないし、備えあれば憂いなしということでオススメです。

※追記
電話機用のサージプロテクターもある。電源コンセントと一体型のものから単体まで様々だ。単体製品ならサンワサプライSANWA SUPPLY TEL-DSLSP テレフォン雷ガードが安くていいかも。


参考
ご存じの方も多いと思いますが、落雷情報を公開しているサイトも雷雲の位置や移動状況が判って便利です。無料のサイトをちょっと調べてみました。


東京電力の雷雲・落雷合成情報の画面。派手に落雷が発生していることが一目瞭然ですな。

気象庁 | レーダー・ナウキャスト(降水・雷・竜巻)
全国の落雷情報 - Yahoo!天気情報
東北電力 落雷情報
東京電力 雷雲・落雷合成情報
北陸電力 気象情報
中部電力 雷情報
関西電力 落雷位置情報
九州電力 雷情報インターネット

なお、冒頭の写真は昨年撮影した落雷の瞬間。フレームからはみ出ているけど、画像一番太い雷が撮影していた自宅マンションからわずか数百メートルのところに落ちた。ほとんど目の前という感じで、閃光と轟音で落ちた瞬間、マジで死ぬかと思った(汗)

『乙嫁語り』姉さん女房は大手小町の夢を見るか

今、姉さん女房が熱い!
といってもアヤシイ話ではなく森薫氏が19世紀中央アジアを舞台に描く乙嫁語り』第1巻、そして最新刊の2巻がメチャクチャ面白いのだ。
森薫氏と言えば英国での恋物語を描いた『エマ』が有名だけど、まさか今度は中央アジアの若嫁を主人公にした話を書くとは誰も予想していなかったハズだ。

で、中央アジアといっても広い。モンゴルの西、カザフやキルギスなどいわゆる「大草原」が広がるステップ地帯からカラクム砂漠、そしてカスピ海を越え、遥か黒海東岸あたりまでが広大な中央アジアだけど、この物語はコーカサス山脈周辺の黒海東岸の内陸の山岳から平野部が舞台となっているようだ。「ようだ」と書いたのは、作者の森薫氏は本編中で具体的な地名を出していないため、あくまでも想像で語るしかないからだ。

この物語の主人公は20歳の女性「アミル」。上のリンク先コミックの表紙にもあるように目が大きく魅力的な女性だ。その彼女が8歳年下の婿「カルルク」の元に姉さん女房として嫁いだところから物語は始まる。アミルは遊牧民の娘で弓が得意、日本人であればちょっとおかず一品の買い物に行くノリで、気軽にウサギや鳥を射る描写がたびたび出てくる。感想としてこんな嫁さんなら欲しい、の一語に尽きます。作者の森薫さんもアミルを魅力的にするためいろいろ詰め込んだ、とも語っているし…

以下、かんたんにあらすじというかレビュー。ネタバレにはそれほどなっていないハズ。

第1巻ではアミルとカルルクの属するエイホン家の人々の紹介がメイン。当時は寿命が短かったせいか、姑(義母、義祖母、義曾祖母)、小姑ともう賑やかなことこの上ない。まあ、エイホン家の人たちはいい感じだけど、他の家とかも含めれば当時、この地に「大手小町」があったらさぞ大変だったろうと気を揉んでしまうわけだ。「孫娘が鷹の刺繍にしか興味なくて困ります」「母が言う嫁心とはなんでしょうか」「嫁入り道具に弓矢は必要?」「嫁に出した娘を(略)」などなどいろいろなテーマで盛り上がりそうだ(妄想)。
そして第2巻では実家との諍い、布支度(ぬのじたく)など異郷の風習が描かれている。この「布支度」という単語はググっても、このマンガに関連するものしか見つけられなかった。実際のものは別の名前で呼ばれているのだろう。

ちなみに作者の森さんは相当このコミックに思い入れがあるのか、アンケートはがきにまでイラストを書き込む凝りようだ。

ハガキのイラスト、右のハガキが主人公アミルと夫のカルルク、左のハガキがアミルの初めての友人かつツンデレ女子 パリヤが描かれている。

日本の歴史コミックには古くは横山光輝三国志に始まり、最近では『ヴィンランドサガ』ヒストリエなど多くの作品があるが、この乙嫁語り』も傑作歴史コミックに仲間入りするのは間違いない。
しかし『テルマエ・ロマエ』などエンターブレインは最近歴史系のコミックで面白いのが増えているような気がするのは私だけ?

『学園黙示録』登場兵器編

今週は『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD(ハイスクールオブデッド)』第6巻発売、そしてアニメ放映とファンには大きなプレゼントが相次いだ。
アニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」ACT.1は佐藤ショウジ氏のコミックの雰囲気を高いレベルで映像化し、完成度の高い映像クォリティを楽しめた。製作スタジオは数々の名作を作り続けたことで定評あるマッドハウス。「奴ら」の動きもいかにもゾンビらしいイメージ通り、生徒や教師が襲われ、校舎が「奴ら」で溢れているシーンはアニメならではの描写で圧巻だ。忘れてはならないのが原作で頻出するお色気シーン、アニメでもちゃんとイイ按配で要所要所に「揺れ」「アオリ」などサービスカットが挿入されているので無問題だ(笑)。ACT.2以降も大いに期待したい。



ご注意
※今回は結構ネタバレしているので、コミック第6巻を読んでから見て貰った方がいいです。




さて、コミック『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』第6巻は期待通り、相変わらず「エロとバイオレンス多めのテイスト、要所に散りばめた佐藤節」という泣かせる構成だ。
ちなみに本巻における佐藤節はACT.23、ACT.25の最後のあたりがそれ。佐藤節にもいろいろあるが、今回の佐藤節は『征途』の第3巻巻末のJDS「やまと」艦砲射撃シーン、『地球連邦の興亡』第4巻巻末リェータ宇宙港シーンなどと同じく「ぐッ」と来る「泣ける佐藤節」だ。※過去の佐藤大輔作品もおいおい紹介したいと思っている。
なお、参考までに登場するヘリコプターなどについて簡単に解説したい。

OH-1ニンジャ
ACT.24冒頭に登場するヘリは陸上自衛隊のOH-1で、自衛隊が装備している国産偵察ヘリコプター。実際に配備されている機体だ。ただし、現時点では実機は非武装で運用されているため、劇中にある武装(機関砲やロケット弾)は装備されていない。


OH-1の任務は偵察、索敵など。搭乗員は2名。劇中では機首に30mm機関砲、両翼に多目的誘導弾が搭載されている設定だが、実機には武装がないことがお分かりだろう。


前方より見たところ。被弾率を下げるため、前方投影面積を抑えた機体形状となっている。

劇中で武装OH-1が使用している「96M」と呼ばれている兵器は、実際は車輌で運用されている96式多目的誘導弾、通称「96マルチ」を指すと思われる。

※弾頭の写真があれば、と思ったが発射機しかなくて申し訳ない…

写真は発射機を備えた車輌で、後部荷台に誘導弾が搭載されている。名前の通り1996年制式化された国産兵器で、光ファイバーで弾頭より赤外線映像を送り、車輌側からコントロールすることで見通しの利かない場所でも攻撃できる。射程は10km程度と言われている。劇中ではOH-1の武器ポッドに「96M」が搭載されている、という設定になっている。本来は戦車ですら撃破可能と言われているので、非常階段の破壊に使用するのはかなりオーバースペックと思われる。
ちなみに愛称のニンジャというのは、公募で付けたモノだが最近はあまり聞かないなあ。

UH-60JA多用途ヘリコプター ブラックホーク
その後、上空から兵士を降下させたヘリコプターが登場するがこれはACT.1にも登場したUH-60JA多用途ヘリコプター「ブラックホーク」だ。米国製の機体で、陸海空三自衛隊で救難、隊員輸送用ヘリコプターとして導入されている。

その後機体側面のドアから隊員が降下しているが、これはリペリング降下と言われるもので空挺部隊などで行われる難易度の高いものだ。

輸送艦
参考までに劇中陸自隊員の台詞で「沖合の輸送艦から来た」というくだりがあるが、これは海上自衛隊の「おおすみ」型輸送艦を指すものと思われる(劇中には未登場)。

1/700 ウォーターラインシリーズ No.6 海上自衛隊輸送艦 LST-4002 しもきた 31006

1/700 ウォーターラインシリーズ No.6 海上自衛隊輸送艦 LST-4002 しもきた 31006


リンク先の画像を見ると判るように「おおすみ」型輸送艦は空母船形を採用し、ヘリコプターの離発着が可能な平甲板を持つ。本艦は通常OH-1等など固有の航空機は搭載していないが、海外派遣や演習などで搭載していた状態だった、ということなのだろう。
ちなみにリンク先のタミヤの1/700ウォーターラインシリーズ「しもきた」は、平甲板部分が透明パーツになっていて、車輌など艦内に収容した機材などをそのまま見ることが出来る。私はこれが発売されたことを知らず、透明パーツが同梱されていない1番艦「おおすみ」を買ってしまい、後から大変悔しい思いをするハメになった。

ということで、今回はかなりミリオタテイストでお送りしてみた。