武蔵野読書生活

神保町と古書店、そしてうまいカレーが好きな本好きのブログ

『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド』

もうすぐ『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』第6巻が発売される。ということでおさらいの意味で床主市の特徴をまとめてみた

★床主市の特徴

陸上自衛隊のヘリコプター部隊は駐屯していない(第1巻ACT.1で学園上空に飛来したブラックホークに向かっての台詞)
・市街地の向こうに海がある(第1巻ACT.1)
陸地と橋で繋がっていない洋上空港があり、滑走路はB747が離発着可能(第2巻ACT.5)
・道路標識に「床主城」「床主洋上空港」「城南渡船場」「床主大橋」などの存在が明示されている(第2巻ACT.5)
・床主大橋の封鎖線の放送で「御別橋」(おんべつばし)という橋の存在が示されている(第2巻ACT.5)
・床主城のすぐ脇に「御別川」がある(第2巻ACT.5)
床主城は5層の天守を持つ城郭(第2巻ACT.5)
・車のナンバープレートに「床主」の文字がある(第2巻ACT.5)
・床主市の封鎖は県警本部の指示で実施(第2巻ACT.6)
・床主市の電力は北方にある奥名湖(ダム湖)で発電、供給されている(第3巻ACT.10)
床主洋上空港には空港署、機動隊、海上保安署、税関があり、職員は2万人(第4巻ACT.13)
・大型のショッピングモールがある(第5巻ACT.18)
・平野コータが眺めている風景、市街の後背に山地が広がっている。奥名湖の存在とあわせると山地は北方に広がっている可能性がある(第5巻ACT.19)

こうやってみてみると、どうみても実在の都市じゃないよなあ。洋上空港で陸地と繋がっていないトコは現実に国内には存在していないし… ただ、文中の台詞で北海道や九州、沖縄に逃げる、というようなものがあったので、それ以外の地域、本州や四国にある、という設定なんだろうなと思う。あと「御別川」という名称は、いわゆる「ナントカベツ」的な蝦夷、アイヌ語系の地名っぽいような印象もするので、意外と東北地方の仙台あたりを原型にイメージを膨らませたのが床主市なのかもしれないな(想像だけどね)。


『アイアムアヒーロー』エア聖地巡礼(後編)

さて主人公鈴木英雄の足取りを追うエア聖地巡礼も勢いで後編をば。移動距離約110kmで、前編石神井編の移動距離数キロ程度とは大違い。第3巻を読めば判るけど、複数の交通手段を使って居る訳だ。

ご注意
※今回の後編は結構ネタバレしているので、コミック第3巻を読んでから見て貰った方がいいです。

あっという間に某名所にたどり着く西方編

『アイアムアヒーロー』ヒーローは西へ編 - 地図Z

主人公鈴木英雄は石神井公園駅東側の踏切から駅構内へ(1)。まだ、正常に運行してる下り方向西武電車に運良く乗車する。途中駅に停車する描写がないので、この列車は「快速急行」か「急行」と思われる。ただし停車駅の所沢を通過してしまい乗客が不審がる描写があり(第2巻第22話)、これも推測だが運転手がこの時点で例の病気を発症し、人事不省に陥っていた可能性は高いだろう。途中、航空自衛隊入門基地(入間基地ですな)で発症した隊員が他の隊員を襲っている描写がある。

車掌がブレーキを掛け、暴走状態(?)だった列車は入門市駅に到着する(2)。駅構内の電光掲示板の時刻表示をみると7時代となっている(第3巻第24話)。最近は列車遅延が発生した場合、当初走るはずだった時刻を表示することがあるので、主人公が駅構内にいる時間が正しく7時前半なのかは不明だが、とりあえず時刻は7時代か8時代の可能性が高い。ちなみに手元にあるJTB時刻表を見ると、通常、石神井公園入間市駅間は急行なら約30分で到着する。ただし、途中駅に一切停まっている描写がないので、もしかすると20分くらいで走破している可能性がある。黒川さんのアパートに6時頃に行って、その後松尾プロから石神井公園駅という流れならば最低1時間以上は電車に乗るまで時間経過している可能性があるので、入門市駅には8時代到着の可能性は高いだろう。

さて主人公は命からがら電車より脱出し、駅前ロータリーでタクシーを拾う。で、他の客と相乗りになるわけだ。相乗り客の一人が横田基地第5ゲートそばの軍病院に行きたいとのことで、タクシーの行き先が決まる(第3巻第24話)。
国道16号線を南下するタクシー、しかし諸事情で第2ゲートでタクシーは停車し、乗客1名が降車することになる(第3巻第25話)。ここで登場する米軍横田基地航空自衛隊入間基地に比べ、比較的秩序が維持されている描写となっている(一部住宅などが炎上している描写はあるが)。今回の病気について、米軍は自衛隊より何か情報や防護手段を持っていたのかもしれないなあと思う訳だ。

その後、タクシーは主人公と運転手だけとなり、一路中央高速で西に向かう。途中、支線の中央高速富士吉田線に入る。ローランド遊園地(富士急ハイランドですな)が見えた所で主人公はタクシーを降りることに(4)(第3巻第27話)。ここいら辺の描写がまた鬼気迫るものがあるんだよなあ。
主人公の腕時計の時刻で11時58分。朝、家を6時前に出てまだ6時間くらいしか経っていない訳だ。

その後、主人公は一人で森林に入る(5)(第3巻第28話)。ちなみにここで出てくる「富士ビネターセンター」は実際には「富士ビジターセンター」、「剣九尾溶岩流」は「剣丸尾溶岩流」のこと。

ということで主人公は富士の麓にまで来てしまった訳ですな。結構、休載が多くてもどかしいけど、ホント楽しみにしている作品なので、作者の花沢健吾さんには引き続き話を盛り上げて行って欲しいものです。

『アイアムアヒーロー』エア聖地巡礼(前編)

読めば読むほど味わいのある花沢健吾氏のホラーコミック『アイアムアヒーロー』。第1巻、第2巻は練馬区の石神井や三原台が舞台だ。ところが私は練馬に住んだことがないので土地勘がまったく無く、主人公鈴木英雄が第1巻第10話からあちこち移動しているがいったいどこをどう動いているのかさっぱりわからない。そこでGoogle マップストリートビューを活用してコミックに描かれている背景を手がかりに調べてみた。言わば「エア聖地巡礼ってところですわ。
 なお、これは私が勝手に調べたもので間違いや勘違いがあったらそれは私の責任ということで。あとネタバレはなるべくしないようにしているけど、まだ読んでいない人はコミックを読んでから見て貰った方がいいだろう。

結構右往左往している石神井編

『アイアムアヒーロー』石神井周辺移動図 - 地図Z


※追記:上の地図をjpeg化してみた


まず地図上の(1)と示されている場所が主人公鈴木英雄のマンションがある場所(の周辺)。第1巻第1話で「高速道路のすぐ横」、という本人の台詞があるので関越自動車道すぐ脇にあるようだ。また、第10話冒頭で出てくる高速道路脇の風景はストリートビューで確認できる。

その後、目白通りを東へ向かい、三軒寺交差点の陸橋を南側に渡り、恋人黒川徹子のアパート(2)へ。ちなみにアパートそのものはストリートビューでそれらしい建物を見つけられなかったので、(2)の位置は適当。聖地巡礼で(2)の位置に行っても現地に黒川さんのアパートは存在していないので悪しからず。

その後、主人公は諸々の事情で(3)の銭湯の前まで走っている(第2巻第17話冒頭)。これもストリートビューで確認したが実在する銭湯だ。重さ4kgの銃と弾薬を背負ってこの距離を走るのは相当体力が必要だろう。

次に主人公は再び三軒寺交差点陸橋を渡り、そこにある交番に行こうとするが、諸般の事情で仕事場である松尾プロへ向かう。松尾プロは、当初目白通り南側にあるかと思っていたけど、描かれていた背景を調べたらどうも練馬清掃工場北側の住宅地にある。実際第1巻第2話の鈴木英雄の松尾プロへの出勤シーンは、目白通り北側を通り練馬清掃工場西側を北に向かって歩いている。(4)は第2巻第17話で主人公が通り過ぎる畑で、ストリートビューで見るとそっくりの風景が広がっている。ここで出てくるオッサンは(5)の次のページでまた出てくるんだよね。

その後、主人公は松尾プロを出て(4)の畑の脇を再び抜け、練馬清掃工場の裏に出る。ここが(5)で、ストリートビューで見るとコミックとそっくりの風景が広がっている。その後、三軒寺交差点陸橋を渡り、西武池袋線石神井公園駅へ向かう。

ということで、今回は第1巻第10話から第2巻第20話までの移動経路を探ってみた。主人公は後半松尾プロから石神井公園駅まで走り通しで、この間は結構な距離だけど、まあ状況が状況なのでそれくらい走るか、という感じですねえ。

意外だったのは鈴木英雄の自宅マンションと松尾プロがかなり近いということ。同じく黒川徹子のアパートも相当近い。もうちょっと広範囲な地域が舞台かと思っていたけど、歩きでも充分回れる距離ですね。梅雨の合間にでも現地に行ってみようかと(笑)。

ということで次は石神井公園駅からどう移動したかを調べてみたいと思っている。

『アイアムアヒーロー』&『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド』


ビッグコミックスピリッツ』で花沢健吾氏が連載中のホラーコミック『アイアムアヒーロー』、昨日既刊全三巻を遂にプチ大人買い。前は職場で読んでいたのだが、毎週細切れで読んでいることにガマンできなくなり、遂に単行本に手を出した次第だ。

ゾンビが登場する作品として有名なゲームやコミックとしてバイオハザードや後述する『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッドがあるが、『アイアムアヒーロー』から滲み出る恐怖感も相当なものだ。主人公は小心者かつ妄想癖のある元漫画家鈴木英雄35歳。今や連載を打ち切られ、売れっ子エロ漫画家のアシスタントに身をやつしている。恋人がいるが、彼女の元カレはヒット作を抱える一般漫画家でそれも鈴木英雄のコンプレックスを刺激する要素となっている。そんな日常で鬱屈を抱えて毎日を生きていた主人公だが、ある日、仕事帰りに車にはねられ首が折れたのにそのまま立ち去る女性を目撃する。彼女に話すが彼女は信じない。そしてじわじわと主人公や恋人の周囲にゾンビ化する奇病が迫ってくる。そして遂に社会が崩壊する時がきた…。
とまあ、こんな感じでグイグイと不可思議な恐怖ワールドに引き込んでくれる。ちなみに第2巻の冒頭、詳しくは書かないが鈴木英雄と彼女とのストーリーはおぞましくも悲しい展開で「ああ、花沢健吾はいいハナシを描くなあ」と感じた次第だ。

なお、主人公鈴木英雄は作者花沢健吾氏ご本人がモデルなのか、本人そっくりに描かれている。アシスタント先の職場でとうとうとコミック論を語るあたりも、もしかすると作者本人の持論なのかもと思っている。また、第3巻巻末にコミック本編に登場した英語台詞の和訳対照表が付いていたが、このサービス精神がなんとも心憎い。今後の展開に目が離せない作品だ。


エロス、バイオレンス、そしてホラーと言えば『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド

こちらもゾンビがキーワードになるコミックだが、『アイアムアヒーロー』とはだいぶ方向性が違い、エロスやバイオレンスの味付けがほどよい感じで、ホラーというよりはサバイバル系のエンターテインメント作品だ。

主人公は床主市と呼ばれる日本にある架空の大都市に住む男女高校生。ストーリーは平和な学園生活が突如、ゾンビ化する奇病によって断ち切られるところから始まる。突如、教師や級友がゾンビ化し、周囲の人間に襲いかかる。社会は崩壊し、正常な人々は孤立し、ゾンビ化した人だけでなく、未感染な正常な人間同士の争いをも生き抜かなければならなくなる…

コミック原作者は佐藤大輔氏。以前より『凶鳥“フッケバイン”―ヒトラー最終指令』などゾンビが登場する仮想戦記小説などを執筆していたが、魅力的な女性を描くことで定評のある佐藤ショウジ氏と組んで書き下ろしの原作を手がけたのが『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド』だ。前世紀からの佐藤大輔ファンとして、遅筆の佐藤大輔氏が原作者と言うことでちょっと不安な部分もなきにしもあらずではありますが、リンク先の表紙にあるように大変魅力的なボディを持つ女性陣の今後の運命が大変楽しみ…いや気になるわけであります。なお、第6巻は7/9発売、今から楽しみだ。
加えて『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド』はアニメ化され、7月から地上波深夜帯で放送されることが決定している。願わくば『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・デッド』の成功を元に、中断している『皇国の守護者』や『レッドサンブラッククロス』の再開を希望するものでありますw。

『図説・幕末志士199』

NHK大河ドラマ龍馬伝』もいよいよあと半年、坂本龍馬が幕末の日本を所狭し駆け巡り尊皇から佐幕まで数多くの志士達に出会う展開となってきた。ただ志士達の多くはよっぽどの歴史マニア出もない限り名前を聞いてもすぐどのような人物か思い浮かぶ人は少ないだろう。そのような時に座右にあると便利なのがこの本だ。

本ムックは、文字通り幕末の志士を紹介したデータベースだ。坂本龍馬勝海舟などの著名人から、伊豆韮山の代官江川太郎左右衛門など知る人ぞ知る、という地方の逸材まで幅広く紹介している。また、面白いのが維新前夜の先覚者である高野長英渡辺崋山なども紹介していることだ。どうしても維新関連の書籍は鳥羽伏見の戦いのあたりから函館戦争までが対象、という構成のものが多いが、それ以前に維新の胎動を作り出した人間の業績にも注目しているところが歴史モノの学研ならではでないだろうか。
歴女の方々も含め歴史ファンやマニアは、ぜひ『図説・幕末戊辰西南戦争―決定版』と併せて手にとって欲しい。

ちなみに高野長英は筆者と同郷で、田舎の小学校では郷土の大偉人として色々と教わった口だ。本書では奥羽諸藩の志士の掲載が少なく寂しい限りだが、それを埋める意味でも高野長英の掲載は地元出身者としてはちょっと嬉しい。

登場人物一覧
※目次登場順。誤字脱字が合った場合は私の入力ミスですので…

松平容保
西郷頼母
秋月悌次郎
佐川官兵衛
神保内蔵助
山川 浩
梶原平馬
柴四郎・五郎
真田喜平太
酒井玄蕃
河井継之助
小林虎二郎

徳川斉昭
会沢正志斎
藤田東湖
武田耕雲斎
藤田小四郎
関鉄之介
相楽総三
天野八郎
林 忠崇
徳川慶喜
徳川家茂
徳川昭武
井伊直弼
阿部正弘
堀田正睦
安藤信正
永井尚志
岩瀬忠震
久世広周
板倉勝静
大久保一翁
勝 海舟
山岡鉄舟
高橋泥舟
小栗忠順
榎本武揚
大鳥圭介
伊庭八郎
川路聖漠
高島秋帆
江川太郎左衛門
渋沢栄一

徳川慶勝
佐久間象山
橋本左内
松平慶永
由利公正
長野主膳
間部詮勝
梅田雲浜
島田一郎
清水次郎長
黒駒勝蔵

孝明天皇
岩倉具視
明治天皇
三条実美
有栖川宮熾仁
姉小路公知
沢 宣嘉
朝彦親王
中山忠光
頼三樹三郎
近藤 勇
上方歳三
沖田総司
山南敬助
芹沢 鴨
伊東甲子太郎
永倉新八
斎藤 一
島田 魁
中島 登
相馬主計
清河八郎
佐々木只三郎
島田左近

吉田松陰
高杉晋作
木戸孝允
久坂玄瑞
毛利敬親
村田清風
大村益次郎
伊藤博文
山縣有朋
長井雅楽
周布政之助
井上 馨
吉田稔麿
広沢真臣
山田顕義
品川弥二郎
前原一誠
赤根武人
来島又兵衛
国司信濃
鳥尾小弥太
白石正一郎
月性
世良修蔵

坂本龍馬
岡慎太郎
山内容堂
後藤象二郎
武市瑞山(半平太)
吉田東洋
岡田以蔵
谷 干城
板垣退助
吉村虎太郎
岩崎弥太郎
陸奥宗光
福岡孝悌
伊達宗城
日柳燕石

平野国臣
鍋島直正
江藤新平
大隈重信
横井小楠
副島種臣
宮部鼎蔵
太田黒伴雄
河上彦斎
真木和泉
島津斉彬
島津久光
西郷隆盛
大久保利通
桐野利秋
小松帯刀
伊地知正治
西郷従道
大山 巌
大山綱良
黒田清隆
有馬新七
田中新兵衛
五代友厚
川路利良
篠原国幹
森山新蔵

天璋院
和宮
大田垣蓮月
村岡局
野村望東
村山たか
松尾多勢子
楢崎 龍
寺田屋登勢
奥村五百子
木戸松子
中西君尾
高杉雅子
おうの
中野竹子
西郷いと
大浦 慶
斎藤 吉
楠本いね

高野長英
渡辺崋山
田崎草雲
梁川星巌
雲井竜雄
福地桜痴
斎藤弥九郎
千葉周作
上野彦馬
下国蓮杖
緒方洪庵
松本良順
福沢諭吉
武田斐三郎
松浦武四郎
河鍋暁斎
月岡芳年
中浜万次郎
前島 密

ペリー
ハリス
ヒュースケン
ブチャーチン
ブリュネ
ロッシュ
パークス
アーネスト・サトウ
オールコック
グラバー
スネル兄弟
シーボルト
ベアト
ヘボン

『誰にも書けなかった戦争の現実』

本書が取り上げている内容は、連合国の兵士と国民の生活を通して描き出した第二次世界大戦のある「現実」である。戦場で暇を持て余した兵士向けに刊行されたペーパーバック、総力戦によって戦場が後方の市民生活と重なった結果、残酷な現実と向かい合うことになる普通の市民達、配給所を「ブリティッシュ・レストラン」と呼ぶ欺瞞など、米英両国の事例を中心に18章構成で書かれている。著者は実際に第二次世界大戦を体験した人間で、米国出身で欧州戦線で負傷して勲章を貰っているようだ。
本書で紹介されている事実でショッキングなのは、太平洋戦線で米兵が日本兵の頭蓋骨などを本国に送っていた、という記述だ。戦争は当事者を狂気に追い込む、と言うのは簡単だが…

ちなみにタイトルのフレーズ「キルロイここにあり」(本書では「キルロイ参上」という表現となっているが)は、私のかつての愛読書、佐藤大輔氏の小説にも使われたフレーズで、戦争中に兵士達に人気のあった遍在する謎のキャラクターのことだ。様々な地域の色々な場所や物に「Kilroy was heare.」と書くのが流行したらしい。個人名でも無く、有名キャラでもなく、キルロイという無名の人名を書く、という行為は、平時を生きる私には分かるようで分からない。キルロイという共通のキーワードを使うことで、互いに会うこともない兵士達が、戦争中という緊張を強いられる時代の中で、何か連帯感を感じていたのかも知れない。

本書は戦争中の連合国の風俗、兵士の心境、銃後の国民の生活とそれを統治する政府の政策などを多面的に知りたい人向けの書籍かと思う。