武蔵野読書生活

神保町と古書店、そしてうまいカレーが好きな本好きのブログ

世界を核戦争の淵から救え!

「ねんがんのBOPデザイナーズノートを手に入れたぞ!」

ということで、20年ぶりに読みましたよ、『バランスオブパワー デザイナーズノート』。Amazonマーケットプレースで入手したがお値段9,000円w
なんでこんなに高いのか。まあ、1989年初版で以降増刷が掛からなく、そのまま消えた名著だからということなのだが、さすがのお値段に逡巡すること三ヶ月、ちょいと小金が入ったので清水の舞台から飛び降りる気持ちで購入したのであります(笑)
 「バランスオブパワー」とは、1985年に米国のクリス・クロフォードによって発表された戦略級シミュレーションゲームだ。プレイヤーは合衆国大統領、あるいはソビエト書記長として1986年から1994年にかけて威信をかけて、世界の覇権を争う。ただ、このゲームには戦闘シーン等は一切ない。各国に対する外交や援助、内政干渉によって自国陣営を強化し、相手陣営を弱体化させねばならないのだ。援助、干渉、派兵の予算や人員の数字をひたすら地道にパラメータとして増減するだけのゲームだ。

 実はウチにこのゲームがある。 写真右上がそのパッケージと同梱されたマニュアル、今回購入したデザイナーズノートだ。ただ、もう稼働する実機がないので、残念ながらパッケージを見て楽しむだけなのだ。ゲーム製作は米ソ対立華やかりし頃なので、本書のマニュアルや解説書にはソビエト連邦」「フィンランド化」「冷戦」などもはや死語と化した、30代以上の人には一種懐かしい単語がてんこもりだ。現実の世界のソビエト連邦は、レーガン軍拡に対抗したが失敗し、1991年に滅亡してしまった。まさにゲームシナリオの期限である1994年まで持たなかったことになる。右下の画像はプレイ画面。大昔に1枚だけハードコピーを取っていたのを今回探し出したモノw

 で、『バランスオブパワー デザイナーズノート』はゲーム解説本だけど、ただのゲーム解説本じゃあない。『バランスオブパワー デザイナーズノート』には、「フィンランド化」とは何か、など国際政治学の用語の解説、そしてクリス・クロフォードが「冷戦」をゲーム化するに際に用いた各種計算式、ゲーム化に至った過程などが掲載されている。かつてはゲームデザインの教科書としても使われたとのことで、本当に読み応えのある本だ。実際、Wikipediaの「フィンランド化」の項目で、本書が触れられているほどの内容の濃さなのだ。政治学、特に1980年代の歴史を学ぼうとする人にとっては最高のテキストになるだろう。

 ぜひ我が国の選良や官僚のミナサンにはBOPとシビライゼーションをぜひプレイして頂き、油断大敵弱肉強食の世界で日本国の進路はどうあるべきか考えて欲しいものであります(まあ、バランスオブパワーが動くパソコンはもう売ってないけど)。