武蔵野読書生活

神保町と古書店、そしてうまいカレーが好きな本好きのブログ

軍事研究 2007年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: ジャパンミリタリーレビュー発売日: 2007/06/08メディア: 雑誌購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (3件) を見る

今回の軍事研究は非常に内容が濃い。先日配備の始まったペトリオットPAC-3の詳細、日本の核戦力整備の想定シミュレーション、ロシア最新軍事事情などだ。
特に石川潤一氏のペトリオットの記事は非常に時期を得たもので関心のある方は目を通すといいだろう。内容的には、空自で配備したPAC-3の基本性能、迎撃方法と配備の詳細、そして湾岸戦争時のPAC-2の実態などがコンパクトにまとめられている。
本記事の読後の感想としては、最新鋭のPAC-3を用いても、弾道ミサイル防衛に完璧はない、ということだ。ぜひ既存のシステムの柔軟な統合運用、そして日本の国情にあった適切な防衛手段の選択を引き続き防衛当局にはお願いしたいと思う。

もう一つ興味を引いたのは日本における独自核戦力の整備に関する高井三郎氏の論文だ。詳細はぜひ記事を読んで頂きたいが、核戦略発動後まで想定して執筆しているところが興味深い。ここで高井氏は核戦略発動後のフォールアウトを分析し、日本としては中国や北朝鮮の核攻撃に対して日本本土の諸都市が無傷だったとしても、東アジア地域の各目標への日本側の核攻撃によるその後フォールアウトを考慮すれば、決して割に合うモノではない、と結論づけている。
ただ、正直なところ、私としては日本の核攻撃の発動条件は「核攻撃された場合に相手にも同様な打撃を与える」という戦略になるのでは、と思っている。故に本稿のように日本側が無傷でもフォールアウトを怖れるが故に核武装を行わないことが良い、という論文の流れには違和感を感じざるを得ない。もちろん、核攻撃に備えたシェルターの整備、という部分には全面的に賛同しているが…
とまれ問題提起として、このような議論は有用である。ぜひ今後もこのような論文の掲載を本誌にはお願いしたい。