武蔵野読書生活

神保町と古書店、そしてうまいカレーが好きな本好きのブログ

『水はなんにも知らないよ』

私が「水に優しい言葉をかけると綺麗な結晶が出来る」というハナシを聞いたのは2006年秋頃だったと記憶している。このような考えは、マトモに科学を勉強している人間には噴飯ものだが、恐ろしいことにこれを信じて子供に授業で教えている教師がいるのだという。あまつさえ、それをテキスト化して配布している授業の研究会まであると言う。
さらに本書によると、学会でこの主張に基づいて物理学会で発表した某旧帝大所属の研究者までいるとか…
この一件だけで我が国の研究者全般の水準が下がったとは考えたくないが、いつの間にか社会に知的衰退が忍び寄っているのかと思うと、何か薄ら寒いものを感じざるを得ない。

本書で筆者は、「水に優しい言葉をかけると綺麗な結晶が出来る」などと主張している『水は答えを知っている』の考え方の誤謬を指摘し、さらに「波動」「πウォーター」「クラスター水」などの類似の疑似科学についても、私も以前から参考にさせて貰っている安井氏や天羽氏の研究成果を引用しながら、その問題点を明らかにしている。
例えば波動測定器と称する機器が、実は単なる皮膚の電位測定器に過ぎないとか、実に詳しく怪しげなビジネスを斬っていくあたりはまさに爽快と言えよう。とにかく我々の健康に対する不安を、ニセ科学が如何に突いてくるのかが本書を読めばよく分かると言える。
ちなみに私の身内にも、どうもこの手の健康器具や食品に嵌りやすい人間がいるので、一度読ませてみようかと思っているところだ(苦笑)。

※参考
・市民のための環境学ガイド
http://www.yasuienv.net/
・冨永研究室びじたー案内(天羽優子氏がサイト製作を担当されているようだ)
http://atom11.phys.ocha.ac.jp/