武蔵野読書生活

神保町と古書店、そしてうまいカレーが好きな本好きのブログ

『ガンダム センチュリー』

1981年、ガンダムブームのさなか、当時の多数刊行されていたファン向けの解説書の水準を、遙かに超える一冊の書籍が送り出された。それがこの『ガンダム センチュリー』だ。ガンダムの製作に関わったスタッフの多くが参加した本書は、余りの記載内容の水準の高さに当時のマニアに大いに注目された。本書にはテレビでは明らかになっていなかった一年戦争のサイドストーリーやモビルスーツ開発秘話、そして当時は多くの人々には周知ではなかったスペースコロニーの概念の詳細な説明などが掲載され、中でもSF的な素養のある筆者陣による記述が、ガンダムを大人の鑑賞に堪え得る『SF的ロボットアニメ』であることを多くの人々に再確認させる一因となった。しかし、その後の版元(みのり書房)の解散により、長い間幻の書籍となっていた。
その後、約20年後の2000年に、刊行当時の月刊『OUT』編集長だった大徳寺氏によって、再度日の目を見たのが本書『ガンダム センチュリー・リニューアルバージョン』だ。
私も1981年の初版を買いそびれ、友人が買ったものを高校生時代に見たっきりだったこともあり、このリニューアル版を一も二もなく購入した口である。『子供向けのロボットテレビ漫画』と思われていたガンダムの世界を、精緻なSF的な世界観で紹介した本書は、高校生時代の私には大変な衝撃だった。現在では、このような世界観を補完する詳細な解説書は目新しくないが、1980年代当時にこのようなものを作り上げた編集者の先見の明には脱帽せざるを得ない。
値段は決して安価とは云えないが、一年戦争に関心のあるガンダムファンは一度は読んで欲しい書籍である。