武蔵野読書生活

神保町と古書店、そしてうまいカレーが好きな本好きのブログ

『一年戦争全史』

本書を今年の春に見たときには、「嗚呼、学研も遂に自社パロディか!!」、そして「学研も遂にガンダムか…」という思いが…
まず、表紙からして可笑しい。大西将美氏のリアルタッチで描かれたザクやコロニーはともかく、デギン・ザビギレン・ザビがいかにもの表情で睥睨しているのが傑作だ。もう、大西画風で描かれてしまうと『歴史群像』シリーズ愛読者の私は見ているだけで嬉しくなってしまうのだ。ぜひ次は宇宙戦艦ヤマトコードギアスの世界をこのテイストでやって欲しいものだ。
さて本書は、いわゆる機動戦士ガンダム一年戦争の世界を正史に見立て、学研『歴史群像』」シリーズ風味で味付けした疑似歴史書と言うべきものだ。何というか、今は無きみのり書房の『ガンダム・センチュリー』の後継者的な意味合いを持つ本なのだろう。
ちなみに<上>とあるように、本書は上下二巻のウチの上巻となり、一年戦争開戦からオデッサの戦いまでを取り上げている。勿論、『歴史群像』でも活躍しているイラストレータ各氏、上田信氏や高荷義之氏、そして漫画家トニーたけざき氏の迫真のイラストとジオラマ(トニたけさんだけだが)などが読者を楽しませてくれる。そしてそれっぽい図版の数々。戦線解説図からモビルスーツの戦術行動の解説図など、遊びココロも満載だ。そういう意味では解説を読まずに図版だけ読んでいても充分楽しめる本に仕上がっていると云えよう。文章は就寝時に読んで睡眠薬代わりとするのもありかも知れない。
ということで本書はガンダムファンだけでなく、架空史、未来史ファンにも満足出来る一冊としてお勧めしたい。