武蔵野読書生活

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フューチャー・イズ・ワイルド コミック版

STARFLEET2007-05-27

フューチャー・イズ・ワイルド コミック版―驚異の進化を遂げた2億年後の生命世界

フューチャー・イズ・ワイルド コミック版―驚異の進化を遂げた2億年後の生命世界


先日、仕事先近くの公園で若い猫を見かけた。空腹らしく私が食べているパンをじっと見つめている。ずいぶん人に馴れているようだ。と思って油断してちょっと手を差し伸べたら引っかかれました。街の中の野生に思わぬ一撃を食らってしまった訳で…
人と共存しているらしい猫でも、先方の論理で動いているのだな、ということ妙に感心してしまった出来事でした。

さて、今回はそんな猫も人類も滅んでしまった、気の遠くなるような未来の物語。と言っても全くの空想の産物ではなく、科学的にあり得る生物進化をシミュレートして描き出した驚異の世界だ。

この『フューチャー・イズ・ワイルド』そのものは、架空の生物進化ネタを得意とするドゥーガル・ディクソンが送り出した疑似地球史の三作目だ。一作目『アフターマン』、二作目『新恐竜』とも話題になった書籍なので、記憶にある方もおられるだろう。手元にまだ1982年の初版本を持っているが、当時高校生だった私は、一作目の『アフターマン』は科学的知見をわかりやすい形の絵物語に落とし込んだ書籍ということで、非常に衝撃的な存在だったことを覚えている。その後、地球科学系の道へ進む一つのきっかけになった書籍とも言えるくらいだ。

そのドゥーガル・ディクソンの描き出した新しい未来が今回の『フューチャー・イズ・ワイルド』、そしてその世界にさらに新しい息吹を吹き込んだのがコミック版だ。『フューチャー・イズ・ワイルド』で描かれている世界は、500万年後、1億年後、2億年後と三つの時代で構成されている。書籍版では、博物学的に各時代の生物が客観的に記述されている。こちらは百科事典を眺めて暇つぶしが出来るタイプの人にはお勧め、というところだ。
一方コミック版では、その三つの時代から主人公となる生物を選び、彼らの生を描き出すエピソードに従って話が構成されている。書籍版では、あたかもナショナルジオグラフィックの科学写真のように静止画で表現されていた生物が、コミックの力で感情移入出来る対象として我々の目の前に用意されている、というワケだ。これならちょっとした未来への時間旅行気分で気軽に読めるのでは、と思う。
もちろん、これでドゥーガル・ディクソンの描き出した世界に興味を持ったならば、書籍版や前2作についてもぜひ読んで欲しいと思う。