武蔵野読書生活

神保町と古書店、そしてうまいカレーが好きな本好きのブログ

藤崎版・銀河英雄伝説は平成の「三国志演義」か?

藤崎竜氏が描くコミック版銀河英雄伝説がアツい。

 

ビッテンフェルト脳筋バカキャラになってしまい(実際暑苦しいキャラだし)、

カリスマ提督ホーランドは、もはや新興宗教の教祖のごときオーラを放って消えていった…

アスターテ会戦に登場するラインハルトの部下たる帝国5提督は、甘い酸っぱいしょっぱい渋い辛いといった感じで人格付けされ、原作よりもよりアブない方向にキャラ立ちしてしまっている。

ネットでは、藤崎版に対して辛口の評価があるのは掲示板等で見かけるが、

ここまで面白いキャラ付けは、昭和からの銀英伝ファンの私にはとても新鮮だ。

かつて道原かつみ氏版でルビンスキーが女体…いや女性化して登場した時と同じか、あるいはそれ以上のおもしろさを感じている。

例えば原作小説が、三国志時代の正史に相当ならば

藤崎版はよりエンタメに走った(良くも悪くも)三国志演義なんじゃないかと

風呂に入りながら妄想してしまった。さすがに『反・三国志』のように世界観を逆転することはないだろうが、かつて行間から想像するしかなかったサブキャラに

新たな息吹を吹き込んだ藤崎氏の才能に惜しみない拍手を送りたい。

海上護衛の馬車馬「海防艦」に思いを馳せる

艦隊これくしょん」(以下、艦これ)の2017年春イベント「出撃!北東方面 第五艦隊」を先日クリアした。今回のイベントでは、報酬艦の他にドロップ艦として新艦種海防艦」が登場した。

小型艦艇好きな私としては、擬人化等はともかくwとして気にしていたが、なんとか全艦ドロップできた。

話は飛ぶが「海軍の本質」とは何だろうか。

基本は「海上通商路の維持」であり、自国の商船を防衛することだろう。

前の大戦では結果的に通商路の維持が困難になり、資源途絶による敗戦を迎えた訳だが、その中で苦闘しつつ海上護衛という海軍の本質のために働いた艦艇が「海防艦」だ。

今回、ゲームに登場したのは「占守型」「択捉型」だが、私はかつて千葉に存在した「鵜来型」海防艦「志賀」こと海上保安庁巡視船「こじま」を利用した、千葉海洋公民館を解体前に遠目に見たことがある。旧海軍の第二次世界大戦参加戦闘艦艇としては唯一艦体部分が残存したものだったが、1998年に解体されて今は残っていない。

歴史的な意義等を思えばまったく残念としか言いようがない話だ。

 

2017/5/21追記

海防艦について、艦種の成り立ちから構造、大まかな戦歴について知りたいのであれば光人社NF文庫『海防艦 日本の護衛専用艦は有効な兵器となりえたか』が内容がよくまとまっており、また現在入手しやすいと思う。関心のある方はぜひ一度手に取ってもらいたいと思う。

 

 

『軍靴のヴァルツァー』は兵器の進化と運用の変遷の教科書になるか?

ちょっと前に知人から紹介されて読んだらハマったコミックが『軍靴のヴァルツァー』。19世紀中葉の欧州をモチーフにした架空の国家を舞台に軍事的な才能に恵まれた青年将校が大活躍する物語だ。

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軍事的才能に恵まれた青年将校、などと書くと、あたかも『銀河英雄伝説』のような爽快な立身出世的物語かというとそうではないのがこの物語の面白いところだ。

主人公ヴァルツァー少佐は、軍事大国「ヴァイセン」(プロイセンをモチーフにした国家)から、周辺大国間の緩衝国となっているバーゼルラントに派遣された軍事顧問だ。軍事顧問といっても派遣先は士官学校の教官役。ヴァルツァー本人は本国での栄達を望んでいたようで、軍事後進国バーゼルラントへの派遣について、当初はあまりよく思っていなかった描写がある。

しかし、バーゼルラントで内紛が勃発し、周辺大国の政治軍事をまじえたドロドロとした干渉が始まり、発火点となった。そこのことが彼と彼の軍事才能が、この紛争を通してこの「疑似」欧州世界全体の兵器運用や戦術に影響を与え始めた…というのが最新刊の第9巻の状況だ(このくらいならネタバレになってないよね)。

ちなみに今回のタイトル、あまり深掘りするとネタバレになってしまうのでぼかすけど、例えば過去巻の鉄条網の軍事的応用に至るストーリーは他の兵器との組み合わせによって戦場での主導権を握る、という展開がとても素晴らしかった。

もちろんあくまでもヴァルァー少佐は19世紀レベルの兵器に合致した戦術レベルで様々な戦術を考案し、戦場で勝利を掴むわけだけど、多少強引なストーリー展開でもリアリティという意味でさほど違和感を感じさせないのが作者の力量なのかもしれない。そういう意味では、マンガで学ぶ兵器進化史入門(ただし近代に限る)的な立ち位置の参考書として、楽しみながら兵器や戦術の進化を学べると思っている。

ということで仮想戦記好きで旧式兵器でもOKと言う人ならまさにオススメだし、歴史ものやSFパラレルワールドものが好きな人にもぜひ読んでもらいたい一冊だ。

読み応え満点、精密イラスト&大縮尺模型写真満載の『日本海軍艦艇図鑑』

先日、仕事帰りに書店で見て、思わず買ってしまったのが『超ワイド&精密図解 日本海軍精密図鑑』だ。

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以前、1/2000の旧バンダイミニスケール海外艦艇プラモデル(現アオシマブランドで海外艦艇の一部が販売中)の塗装参考用に、某社の艦艇関連のムックを買ったが、迷彩塗装の年代等の記載もなく、結局数年積んだままで古本屋行きになってしまったことがある。対してこの書籍は、歴史オタやミリタリーオタである私の中で定評のある「歴史群像編集部編」ということで、なかなかかゆいところまで情報の掲載されているのがミソだ。

例えば同一スケールで日本海軍黎明期の甲鉄艦や日露戦争時代の戦艦と大和の横面イラストが掲載されているので、直感的に両艦のサイズを捉えることが簡単にできる。艦艇の発展、艤装の変化を同一スケールで眺めていると、いかにこの数十年の艦艇技術の進歩が著しかったかが一目瞭然にわかるのがホント面白い。

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なお、主な艦艇イラストを描いているのは、考証に定評のある水野行雄氏や舟見桂氏だ。

また、大縮尺の艦艇模型の写真も多数掲載されている。

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上は駆逐艦秋月1/100模型の部分写真だけど、模型の参考書籍として充分に使える書籍になっていると思う。私もウチで積まれたままになっているグンゼ産業の1/1000メタルキット戦艦大和長門を十数年ぶりに作りたいと感じてきた。

とにかく旧日本海軍艦艇マニアにはお勧めの一冊ですね。

科学少年マインドが甦る!?「南極建築 1957-2016」を見てきました

今週のお題ゴールデンウィーク2017」ということで、銀座LIXILギャラリーで開催中の「南極建築 1957-2016」を見に行ってきました。f:id:STARFLEET:20170507121806j:plain

遙か昔は「科学少年」として南極やら宇宙に思いを馳せたものでしたが、もはやそれも遠い昔の話になってしまいました。それいまでも今でも「宇宙」や「南極」という単語に反応してしまうわけで。聞いたところで写真撮影OKということで同展を紹介。

 

会場は東京メトロ京橋駅脇のリクシルギャラリー。

ちなみに手前側お隣のビルは警察博物館。イベント目当ての家族連れだけでなく、耳にイヤホン差したちょっとコワモテのスーツ姿の兄さんも。

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地図はこちら↓

https://www.google.co.jp/maps/place/LIXIL:GINZA/@35.6752791,139.7690479,18.75z/data=!4m5!3m4!1s0x60188be3bac91329:0x9fbabd128cad1ead!8m2!3d35.67535!4d139.769584

 

会場はギャラリーの2階、さっとみれば十数分で回れるくらいのミニ展示会ですが、南極好きなら一時間でも二時間でも見ていたい感じ。「宗谷」時代から新「しらせ」時代までの様々な写真や実際に使われた道具類、そして観測基地の変遷、世界各国の南極観測基地まで紹介されていて中身はかなり濃いので、南極好きにはホントおすすめデス。

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「お約束」のペンギンと宗谷のツーショット。

 

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 南極メカといえば欠かせないのが雪上車ですよね。

 

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「しらせ」がどうやって砕氷するかよくわかる動画も公開されてました。

 

モリナガ・ヨウさんミニ原画展も開催中(だった)

 なお、ギャラリー1階では、「南極建築 1957-2016」ブックレットでイラストを描かれているモリナガ・ヨウさんのミニ原画展も開催中でした(5/9まで)。ワールドタンクミュージアムのトリセツ時代からのファンなので、とても楽しめました。

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ちなみに「南極建築 1957-2016」ブックレットでのモリナガ・ヨウさんのイラストがどう描かれているか、展示でネタばらしされていてとても面白かったです。

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ブックレットではこうなっているイラストは…

 

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原画で見ると、イラスト部分とトレーシングペーパー上の書き文字で別に描かれていたんですね。

 

なお、この「南極建築 1957-2016」ブックレットは会場隣のブックギャラリーで購入できます。

このブックギャラリーですが、入り口はフツーの雑誌類が並んでいるだけなんですけど、奥に行くに従って建築や都市計画、建築史の専門書がずらりと勢揃いしており、その手の分野が好きな方にはビビビと来るようデス。

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実はこのイベントの件をツイートしたらモリナガ・ヨウさんからリプライ頂きましたが、モリナガ・ヨウさんにも来るものがあったみたいですね。

 

 

 なお、「南極建築 1957-2016」は2017年5月27日まで、モリナガ・ヨウさんのミニ原画展は5月9日まで。

また「南極建築 1957-2016」ブックレットは、Amazon等でも販売されているのでそちらからも入手可能です。

 

 

■目次

各章見開きイラスト byモリナガ・ヨウ+写真&解説原稿
・南極へ、ようこそ
・南極建築 1957-2016
昭和基地の建設
・日本初のプレファブ建築
・高床式の建築へ
・内陸基地への挑戦
・南極生活をより快適に
自然エネルギーの活用
■論考
昭和基地を設計した建築家・浅田孝」 笹原克 (地域計画プランナー、オイコス計画研究所代表取締役
「スノードリフトとの付き合い」半貫敏夫 (日本大学名誉教授)
南極大工体験記(インタビュー)「創意工夫と臨機応変で愉しんだ」堀川秀昭 (ミサワホーム建設(株)大工職)
「南極で暮らすテクノロジー」石沢賢二(国立極地研究所極地工学グループ技術職員)
「世界の南極基地」白石和行(国立極地研究所所長、総合研究大学院大学教授)

 ※目次はLIXIL出版Webサイトより引用させて頂きました。

「復興支援」と「美味しんぼ」……東京国際ブックフェア 震災復興支援シンポジウム

 

 

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先日まで東京ビッグサイトで開催されていた東京国際ブックフェア、その最終日7月5日に開催された震災復興シンポジウムを聴講する機会を得た。以下は当日取ったメモから再構成したもので、基本的には自分用備忘録という感じでのまとめのつもりだ。

なお、当日シンポジウムの録音・録画等は禁止されていたので、メモ時の聞き間違いや勘違い、抜け(途中メモが追いつかなかったので抜けが多々あります)についてその責任は全て私と言うことになります。

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震災復興シンポジウムとは、小学館が2012年に刊行した震災復興支援マンガ『ヒーローズ・カムバック (ビッグ コミックス)』がどのような経緯で刊行されるに至ったかなどを、本書に参加したマンガ家によるトークセッション等を通じて公開する、というもの。「ギャラリーフェイク」や「伝染るんです」のファンであり、本書は懐かしさもあり購入していたが、その裏話も期待しつつ聴講した次第。本エントリ前段はシンポジウムでの登壇者発言要旨、後段は聴講して感じたことや例の「美味しんぼ」問題について感じたことを簡単にまとめています。

 

登壇者発言要旨●①細野不二彦さんの冒頭挨拶

石巻の視察した際、「何故ボクはここにいるんだろう」と感じ、ここにいる意味はなにかを考えてしまった。被災した東北のためのマンガを描かないと、と思って悶々としていたが、あるとき他のマンガ家さんがやっていたチャリティコミックと出会った。それをヒントにマンガ家の各雑誌の連載ワクを使い、そこで新作読み切りを描くアイデアが浮かんだ(2011年の暮れも押し詰まったころ)。

早速、高橋留美子椎名高志両氏に根回しの上、小学館に提案した。当初は連載しつつ1年かけて単行本としてのチャリティコミックを作ろうと思った。小学館だけでなく、他の出版社にも声を掛け、何人かにOKを貰った。

(自分は)震災をテーマに読み切りを描いたが、その際、『歴史遺産を未来へ』(平川新著)や現地でボランティアをした編集者の体験を参考にした。

本書は作家が何がしかの貢献をすることができるひとつのモデルになったと思っている。また、(冒頭の自分自身からの問いに対して)何とか答えを出すことができたと思っている。

 

登壇者発言要旨●②トークセッション

細野さんの挨拶に続いてトークセッションが行われた。

出席者:藤田和日郎氏、吉田戦車氏、細野不二彦氏、小学館大島氏(パネリスト着席順)および司会者 ※以下、発言者名敬称略

 

ヒーローズ・カムバック』表紙のとらは小さすぎる、かわうそとカッパくんは大きすぎる等、表紙について司会者からネタふりがあった。トークセッション開始早々、会場の雰囲気はいっそう和んだ感じに。

 

○藤田

ヒーローズ・カムバック』について、細野さんから初期に声をかけられた。当時、震災発生で落ち込んでいた。何かやらなければ、でも何ができるんだろう…と悩んでいた。この話をもらって助かった。気持ちのカオス状態に出口をもらった。

 

○吉田

自分の作風はギャグ漫画であり、震災をギャグで表現できるか悩んだ。そこで震災そのものではない内容にした。

 

○藤田

雑誌にある自分の連載ワクを使うという点と、旧作を再利用するという点は助かった。掲載枠のない状態での新規書き下ろしはなかなか難しい。また、一度描いたことのあるキャラやストーリーであればマンガ家は描きやすい。さすがに細野さんはマンガ家の生理をよくわかっている。また、編集部もヒット作の再利用ならイヤな顔をしない(笑)。

 

○吉田

東電や政府への思いがあり、シイタケとセシウムネタで描きたかったが、歯にものがはさまった感じになってしまった。なお、『ヒーローズ・カムバック』について「うる星☆やつら」と「機動警察パトレイバー」が入っていればバイ売れたハズでは(笑)。

 

○細野

高橋留美子さんに打診した際に「うる星☆やつら」は自分の中で完結した存在なのでもう書かないと言われた。ゆうきさんに打診したけど『実はパトレイバーは権利がフクザツで…』と言われてダメだった。

 

これについてパネリストの補足情報を総合すると、当時スタートし始めたパトレイバー実写版の件が背景にあり、ゆうきさんがパトレイバー実写版制作開始を知らないとツイートした件と繋がるらしいとの話になっていた。なお、ゆうきさんは原稿が遅いがたまたま連載切り換えタイミングなのでよかったという話も。次に『3.11を忘れないためにヒーローズ・カムバック』を振り返って見て、との問いに対しての各氏から。

 

○藤田

今回、『ヒーローズ・カムバック』のプロジェクトの旗ふりを他人にまかせたのは反省している。

 

○吉田

寺田克也さんなどと一緒に被災地に行き、避難所を訪問して子供達と一緒に絵を絵を描くプロジェクトをやっている。岩手出身であり今後も継続して支援になるようなことを続けたい。

 

○細野

ヒーローズ・カムバック』以外では、避難所へ本を送るプロジェクトを手がけた。これは自宅に大量にあった献本を使った。

 

○大島

ヒーローズ・カムバック』で昔のキャラを描くことはどうだったのか?

 

○藤田

島本和彦さんは昔のキャラは連載が終わったら作家の中にはもういないと言っていた(つまり描けなくなると言う意味)。そういう意味でそれに対するチャレンジだった。島本さんが本書で「サイボーグ009」で他人のキャラ描いているのはずるいと思った。

細野さんより、こちらから島本さんにヒーローズ・カムバック』ではサイボーグ009」を描いたらと打診した、との発言あり。

 

○吉田

かっぱくんやかわうそは大丈夫だったが、サイトーさんはもう動かなかった。

(司会者からマンガに出てくるキャラが次々絶滅危惧種になっているとの問いに)全部カッパだと思えばイイと思ってます。

 

○大島

がわぐちかいじ氏から「マンガ家がマンガを描ける話を持ってきてくれてたりがとう」と言われた

(細野氏に対して)「グーグンガンモ」はまだ(細野さんの中に)いるのか?

 

○細野

まだ描ける(笑)。さらにドッキリドクターも描ける。

 

○藤田

本件の依頼で細野さんが仕事場にお願いに来たのか感動した。

 

○細野

実は最初、高橋留美子さんには電話だけ依頼したが、さすがに後で「これはまずい」と思って菓子折持って挨拶に行った(笑)。

 

最後に司会者から今後はどう活動するのかとの問いに対して。

 

○藤田

(支援は)継続しないといけない。とにかく自分の無力を自覚した。

今後も描きつづけなぃといけないと思っている。

 

○吉田

東北に縁が深く、被災した人の気持ちは忘れないようにしたい。

 

〇細野

今後は未定。ただ、震災をきっかけに日本人が変わったと思っているので描き続けたい。

 

●感想

東日本大震災発生時、マンガ家だけでなく多くのクリエイターが被災地を遠く離れた場所で自分は何しているのか、今後何が出来るのかなど悩んだと聞く。それに対する一つの答えとして本書は有意義だったということは興味深かった。表現者が表現したくても方向性を見失っていた時に、このような企画を生み出した細野さんは素晴らしいと感じた。

また、震災復興支援というテーマでありつつも、震災そのものを対象にしていないマンガが掲載されていた件について、今回疑問が氷解したのは個人的には大きな収穫だった。

なお、小学館ビックコミックスピリッツと言えば先だっての「美味しんぼ」問題が記憶に新しい。今回のトークセッションではその件は触れられなかったし、シンポジウム自体に聴講者からの質問コーナーがなかった。つまり今回のシンポジウムでは「美味しんぼ」について一切言及がなかった。

小学館やスピリッツ編集部には社会派的な意味で「問題意識」があるのだろうと私は思っている。娯楽媒体であってもそのような意識は重要な要素だと思う。むろん商業的な部分との折り合いの元で、という前提だろうけど。

それが良く出たのがこの『ヒーローズ・カムバック』プロジェクトなのではないかと思う。ただ、時折、実証的な認識や客観的な検証で弱い部分があるなと感じることもあり、今回「問題意識」だけが先行した結果が「美味しんぼ」問題だったのでは…と感じた次第だ。

 

以下、余談

細野さんのお顔を数十年ぶりに拝見した(大昔のアニメ誌で見た記憶があるが、生でのは今回初めて)けど、企業の総務部に居そうな謹厳実直そうな老境にさしかかったサラリーマン的な風貌で、私が中学生だった「さすがの猿飛」の頃から長期間バリバリ一線で活躍していることを思えば、もはやそのような年齢となるのも当然かとも感じた。とまれ風貌からは『電波の城』のような、人の心の内面をえぐり出す激しい作風を生み出すように一見見えないギャップが私の中ではとても面白かった。

 

元祖レトロフューチャー「小松崎茂の世界」を堪能

先日、所用で出かけた際にちょいと銀座まで足を伸ばし展覧会を見てきた。

小松崎茂 幻の超兵器図解 復刻グラフィック展」というヤツだ。

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小松崎茂」と言っても最近の若い人達は知らんだろうけど、40代後半以上のオッサンには今は無きプラモメーカーイマイのサンダーバードの箱絵や子供の妄想をかき立てる魅惑的な未来予想図(時には絶望的な滅亡地獄絵図も描いていたけど)でおなじみの画家さんだ。

空想科学イラストの旗手、小松崎茂のボックスアート作品いろいろ - DNA

その小松崎氏も亡くなられてからもはや15年ちかく経ってしまった。氏は第二次世界大戦の頃から挿絵画家として活躍し、児童向け絵物語の挿絵等を手がけていたが、将来登場するであろう超兵器の臨場感溢れるイラストが大人気だった。

今回の「小松崎茂 幻の超兵器図解 復刻グラフィック展」では、『機械化』という雑誌に掲載された超兵器のイラスト多数を集めて展示していた。『機械化』は第二時世界大戦頃に日本で刊行されていた科学雑誌だ。当時は科学雑誌と言えば各種兵器を記事として取り上げるのが一般的だった。今で例えれば『ニュートン』の特集に『中国空母遼寧」の実力』と言った現用兵器モノがあり、さらに連載記事に『戦場も無人化!?無敵ロボット兵団大進撃』という感じで近未来兵器が毎回紹介されているようなもんかも。

ただ、会場には兵器を描きつつも搭乗している兵士が銃火にのけぞっている絵もあった。当然、時節柄、のけぞっている人物は白人らしき姿形をしているのだが、児童向けと言えども戦争の悲惨さも描き込んでいるあたりに氏の思いが何かしらあったのだろう。

ちなみに我が家には、祖父や父の遺品で戦前、戦中の雑誌が残されている。当時このような未来兵器ものは読者に好まれていたようで頻繁に様々年齢層の雑誌で取り上げられていたようだ。

下の画像は昭和8年の少年倶楽部付録の「特集未来戦」に掲載されていたもの。昭和初期に「テレビジョン」という用語が一般向け雑誌で特に解説もなしにさらっと使われているあたりが驚きだった。

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ちなみに会場では図録は特に販売されていなかったが、記念ということで小冊子『國防雑誌『機械化』の時代』が販売されているので買ってきた。ちなみに上で紹介した「特集未来戦」への言及があり、日本における地底戦車に関する言及はこの「特集未来戦」を嚆矢とするのだそうだ。「特集未来戦」は貴重な歴史資料として大事にとってあるが、そういう意味でもエポックメイキングな存在だったとはますます興味深い。できればきちんと研究してみたい。

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さて、会場だけど、場所は銀座の表通りからちょっと入った小道沿いのおしゃれな画廊。入り口がカフェになっていて、丸い看板が目印(下の写真参照)。カフェを通り抜けエレベータで三階にあがればOKだ。なお、この「小松崎茂 幻の超兵器図解 復刻グラフィック展」は6月28日(土)までなので興味のある人はぜひ。

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チーパズギャラリー

http://desk44.wix.com/kikaika